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コラム

2023.05.15

「医療介護総合確保方針」の基本的な方向性の見直し

2024年度の介護・診療報酬・障害福祉トリプル改定が迫る中、その方向性を決める「医療介護総合確保方針」が見直され、厚生労働省から示されていますので確認しておきましょう。

以下、基本的な方向性についてのまとめです。この方向性に準ずる形で、介護保険法の見直しは進められ、最終的には報酬改定といった具体的な運用の見直しにまでつながるものとなります。

(1) 「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築
今般の新型コロナウイルス感染症対応において、地域における医療・介護の提供に係る様々な課題が浮き彫りとなった。こうした課題にも対応できるよう、平時から医療機能の分化及び連携を一層重視して国民目線で提供体制の改革を進めるとともに、新興感染症等が発生した際にも提供体制を迅速かつ柔軟に切り替えることができるような体制を確保していくことが必要である。また、地域包括ケアシステムについては、その更なる深化・推進を図っていくことが重要であり、もしものときのために、本人が望む医療やケアについて、前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発も重要である。

(2) サービス提供人材の確保と働き方改革
生産年齢人口が急減する中で、医療・介護提供体制の確保のために必要な質の高い医療・介護人材を確保するとともに、サービスの質を確保しつつ、従事者の負担軽減が図られた医療・介護の現場を実現することが必要となる。介護従事者については、これまでの処遇改善の取組に加え、ICTや介護ロボット等の活用、手続のデジタル化等により介護現場の生産性向上の取組を推進し、専門性を生かしながら働き続けられる環境づくりや復職支援、介護の仕事の魅力創出や学校等と連携した魅力発信に取り組むとともに、いわゆる介護助手の導入等の多様な人材の活用を図ることで、必要な人材の確保を図っていくことが重要である。

(3) 限りある資源の効率的かつ効果的な活用
人口減少に対応した全世代型の社会保障制度を構築していくことが必要である。急速に少子高齢化が進む中、医療及び介護の提供体制を支える医療保険制度及び介護保険制度の持続可能性を高めていくためには、限りある地域の社会資源を効率的かつ効果的に活用していく必要がある。こうした観点からも、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築、複合的なニーズを有する高齢者への医療及び介護の効果的かつ効率的な提供、ケアマネジメントの質の向上を推進することが重要である。

(4) デジタル化・データヘルスの推進
介護については、地域包括ケアシステムを深化・推進するため、介護情報を集約し、医療情報とも一体的に運用する情報基盤の全国一元的な整備を進めることとしている。医療・介護分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、患者・利用者自身の医療・介護情報の標準化を進め、デジタル基盤を活用して医療機関・薬局・介護事業所等の間で必要なときに必要な情報を共有・活用していくことが重要である。

(5) 地域共生社会の実現
孤独・孤立や生活困窮の問題を抱える人々が地域社会と繋がりながら、安心して生活を送ることができるようにするため、地域の包括的な支援体制の構築、いわゆる「社会的処方」の活用など「地域共生社会」の実現に取り組む必要がある。地域共生社会の実現に向けては、医療・介護や住まい、就労・社会参加、権利擁護など複合的な支援ニーズを抱える方を地域で支える基盤をより強固なものとしていくことが求められる。

上記の(4)は、現行の方針では「情報通信技術(ICT)の活用」となっていたものが「デジタル化・データヘルスの推進」となっており、介護分野におけるDXについて「活用しましょう」から「推進します」に変化していることがわかります。一方で、現行方針の「(3)質の高い医療・介護人材の確保と多職種連携の推進」が、「“限りある資源”の効率的かつ効果的な活用」となっているように、国は「もはや働き手は増えないのだから、効率的なサービス提供を行うためにはDXを推進していくしかない」という認識に変わったことを表しています。

訪問記録アプリなど、訪問介護の現場でもデジタル化が進んできたように、介護現場の最前線にまでDXを推進させようという意思が感じられます。今後、議論される介護報酬や加算の仕組みに、これらの方針が反映されていくことになるでしょう。もはやデジタル化は先進的な取り組みではなく、やらないとついていけない当たり前のことになっていきます。

社会福祉士 板垣慎司

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