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コラム

2023.01.11

2024年介護保険法改正の議論はどうなったか?

厚生労働省は12月20日に「介護保険制度の2024年度の見直しに関する意見」を公表しました。次の介護保険法改正に向けて議論されてきたそれぞれの論点ごとに、今後の方針が意見としてまとめられています。
論点のうち主な7点について、それらがどのような方針となったのかをみてみましょう。

① 軽度者の生活援助サービスなどを介護保険から総合事業へ移行する
② ケアマネジメントへの自己負担の導入
この2点は2027年の次の改定で結論を出すこととなり「先送り」とされました。

③ 65歳以上の中高所得者の介護保険料引き上げ
④ 老健などの多床室の室料を保険対象外として自己負担へ
財源確保のためのこれら2点は、2023年の夏までに結論を出すこととし、今回の法改正に「なんとか間に合わせたい」という意欲が見えます。

⑤ 利用者負担が2割・3割の人の基準の見直し
これについては、2割負担の新基準は2023年夏までに結論を出し、3割負担の新基準については今回は「先送り」とし、次の2027年改定で見直すことになります。「せめて2割負担の人だけでも増やしたい」ということで妥協したようです。

⑥ 介護保険料支払いの40歳未満の人への拡大
⑦ 補足給付の見直し
これらの2つは、2027年の改定時に引き続き検討するとなりました。これも「先送り」です。

特に論点①では、要介護1・2の方への訪問・通所介護を介護保険の給付から外し、市区町村の総合事業に移行してはどうか、という議論が行われてきましたが、今回も結論を先送りする方針となりました。
もう何年もなされている議論ですが、なかなか実現しません。それはそうです。軽度者の生活援助サービスや通所サービスを総合事業に移行したとして、どの市区町村にもその受け皿がないからです。国は「地域のボランティアが担い手の中心となる」という“餅”を絵に描きましたが、先行して総合事業に移行した要支援の方へのサービスでさえ、指定事業者が引き続き低い報酬で受けているのが現状です。

より高い専門性が必要な要介護1・2の方への支援を、しかもボランティアで担えるような人は地域にはいません。それどころかどの産業が求人を出しても人が集まらないのが現状です。そもそも人がいないんです。今後の行く末を肌で感じるようになってきた縮小する日本社会で、増え続ける高齢者をどうやって支えていくか?考え方を根本的に変えなければならないのだと思います。

介護事業者には厳しい改定になると言われていた2024年の改正ですが、医療での後期高齢者保険料の引上げや、止まる気配のない物価高騰など、高齢者の負担は重くなるばかりで、これ以上の負担増は慎重に進めるべきという声が高まっています。このままだと政権がもたないと考えるのはいつものことで、国民の(特に高齢者の)負担増につながる改定はほぼ「先送り」としています。

ただ先送りされた論点についても今年の夏以降に結論が出され、2024年の介護報酬改定に大きく反映されてくるかもしれません。これから舞台は介護保険部会から介護給付費分科会に移り、運営基準や報酬単位・加算など、国の意思がより具体的に明示されてきます。引き続き、議論を注視していきましょう。

社会福祉士 板垣慎司

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