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コラム

2022.08.30

増える在宅サービス事業所

厚生労働省が発表した2022年4月度の介護給付費実態統計によると、訪問介護は2022年3月末時点で34,372事業所となり、昨年同時期の33,750事業所より622事業所増加しました。訪問介護事業所は2018年度から2019年度にかけて減少していましたが、2020年度からは再び増加し、3年連続の増加で過去最高を記録しました。

訪問介護では、高齢化の進展に伴うニーズの拡大により、まだまだ利用者を獲得できると見込んで、事業所を増やしたり、新規参入したりする事業者がいる一方で、東京商工リサーチによると、今年の上半期に倒産した介護事業者の種別では訪問介護が最多でした。ヘルパー不足が倒産の最大の要因となっています。人材確保が経営の成否を分ける状況は、今後も変わらないでしょう。

一方で、地域密着型通所介護については2022年3月末時点で18,947事業所となり、2016年の23,763事業所から2割以上減少しました。地域密着型通所介護は2015年度介護報酬改定での介護報酬の引き下げにより、経営が難しくなり、閉鎖や統合が増加、その後も事業所数の飽和や、新規開設の許可が下りずらくなっていることを背景として、新規出店を通常規模型以上にする法人も少なくありません。
通常規模型・大規模型の通所介護は一貫して増加しており、今回の発表でも24,445事業所と、過去最多を更新しています。つまり、規模の大小を問わず、通所介護の総定員数は、増え続けているという事になります。

要介護状態になっても在宅で暮らし続ける高齢者は増えています。一方で、サービス付き高齢者住宅などの介護サービスを受けることが出来る“住まい”も増えていますので、高齢者の生活を支えるサービスの供給量は、社会を維持するために今後も増えていくことは確定しています。

そのような状況の中、訪問介護では働くヘルパーの高齢化もあり、人手不足が特に深刻化しています。
今月、介護労働安定センターが発表した昨年度の「介護労働実態調査」によると、訪問介護のヘルパーの平均年齢は、各職種の中で最も高い54.4歳。60歳以上のヘルパーが全体の37.6%を占めています。年齢層別にみると「60歳以上65歳未満」が13.2%で最多。次いで「55歳以上60歳未満」が12.3%と多く、「70歳以上」も12.2%となっています。今後は、年齢を重ねてリタイアするヘルパーが一段と増えていくとみられます。

この国全体の若者が減少する中で、これから介護現場に多くの働き手が流入してくることは期待できません。まずは今いる人たちでサービスを提供し続けられる体制に変えていかなければなりません。業務を効率化し、働き手が余裕をもってやりがいを持ち続けながら働くためにも、業務のIT化は欠かせません。国は次の法改正でも「事業者の大規模化」を促進しようとしていますが、介護現場にデジタルを導入するいわゆる「介護DX」に投資できるような大規模法人が、人集めについても有利になってくることでしょう。

それに対して、事業規模の小さな法人にも強みはあります。地域に密着したきめの細かいサービスで、利用者からの大きな信頼を得て、その地域で他の事業者には代えがたい地位を築くことが出来ます。それを実現するためにも、やはりデジタルの活用は避けて通ることは出来ないでしょう。5年後、10年後に、自分たちの事業所で働いている職員のメンバー構成をイメージしながら、このデジタル化という課題を乗り越えていく必要があります。むしろ、小規模で職員数の少ない事業所のほうが、デジタル機器や新しい仕組みの導入、そしてそれらに慣れるまでの期間は短くでき、職員への負担は思っているより小さくなるものです。

社会福祉士 板垣慎司

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