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コラム

2021.11.01

第6波が来る前に考えておきたいこと

新型コロナの新規陽性者数も大幅に減少し、世間では飲食店への自粛要請の解除や、GOTOトラベルの再開が議論されるなど、かつての生活を取り戻そうとする動きが活発になってきました。これまで、現場の最前線で頑張ってこられた医療・介護従事者の皆様には心より感謝します。

も各種業界を支援し、経済を回復させるための制限解除や、見送っていた各種イベントの再開は歓迎すべきことですが、気を緩めないで進めたいです。その中でも、優先して制限緩和・解除に取り組んで欲しいのが、病院・高齢者施設での面会制限です。

この2年近く、入院している家族や、高齢者施設にいる親との面会は厳しく制限されていました。面会謝絶に始まり、のちに端末を通じたリモート面会などの取組も見られるようになりましたが、特養など看取りの機能を持った施設では、面会制限によって大切な家族の最期に寄り添うことが出来なかった方々も多くいらっしゃり、その悲しみと悔しさはいかばかりのものかと思います。

終末期では、医療が行えることはほぼなくなり、痛みのある場合はそれらを緩和しながら、最後まで自分らしく生きてもらおうと、ケアスタッフは努力していますが、残念ながら多くの方が「毎日来てくれた娘が来なくなった。ずっと一人で寂しいなぁ」という想いを胸に抱きながら最期を迎えたのかもしれません。認知症の症状により、感染症のこと自体を理解できずにいた場合は、「いつも来てくれたあの人、急に来なくなった」「毎日知らない人たちに囲まれて辛い」となってしまい、自分らしさに向き合うことさえも出来なかったでしょう。

今回のコロナによる制限は、“終末期をこう迎えたい”というコミュニケーションを人生会議(ACP)などによってあらかじめ合意していた人にさえ、想定外の出来事としてやってきました。感染症対策ですから、クラスターの発生リスクを抑える、他の入居者、患者への感染を絶対に防ぐ、という目標を下げることが出来ないのはよくわかりますが、施設のロビーで面会を断られて肩を落としている家族の横を、「おはようございます」と言って外の世界から出勤してくる職員がいるのも現実なわけです。

もう少し何とかできなかったでしょうか?職員は専門職なので、感染対策は万全という事なのでしょうが、自分を育ててくれた親の手を握り、背中をさすりながら感謝を伝える時間を少しでも多く過ごしたいという家族の想いを「感染リスクがある」という理由だけで拒絶してしまうのは、あるべき理想の感染対策ではなかったような気がします。こういう時、人としてどうあるべきか?何を優先してどこに知恵と技術とお金をかけるべきか?の議論をしっかり行う前に“面会謝絶”になだれ込んでしまいました。

第6波に備えて準備をしましょうと言うのであれば、「次の波が来た時に、最期を迎える方と家族の物語を、分断せずにどうやって完結させるか?」「そこに向かって私たち専門職は何ができるか?」という視点で、優先度を上げて議論し、準備していきたいです。

社会福祉士 板垣慎司

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