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コラム

2021.02.22

バイスティックの7原則 ⑦自己決定の原則

これまでご紹介してきた『バイスティックのケースワークの7原則』ですが、これが最後、7つ目となります。

⑦自己決定の原則

「自己決定」というのは私たちがよく聞く言葉です。それを原則と呼んでしまうと“クライエント(利用者)の決定が最優先”のような意味にも聞こえますが、ちょっと違います。

バイスティックは、“援助者は「クライエント(利用者)には、自分がどうしたいか?どうありたいか?を自ら決定する自由と、権利と、ニードがあるのだ」ということを、具体的に認識する態度が必要である”と言っています。

これまで6つの原則の中で、援助者が取るべき基本的態度を自分なりの理解でご紹介してきました。これらの6つの基本的態度の原則に則って、専門的援助関係(ラ•ポール)を構築した上で、クライエントが「私が決めていい。私が決められる。」と感じ、“生きること”や“暮らすこと”を自己決定出来るように援助する。援助そのものの目的は、クライアントの自己決定の促しなのだ、ということをわかっていることが大事だとバイスティックは言っているのです。

では、自己決定をしたクライエントの想いは全て実現すべく支援するべきでしょうか?

違います。バイスティックは、“自己決定には4つの制限が伴う”と言っています。

まず、法に触れないという市民法による制限。次に、人としていかがなものか?という道徳法による制限。さらに、流石にそれはあなたには難しいでしょう、という個人の能力による制限。最後は、活用しようとする社会資源ではその望みは叶えられない、という機関の機能による制限です。

つまり、「私が決めた!」からと言って、法を犯してはならないし、法律を守っているからと言って何をやっても良いわけではない。身体能力を超えた行動も許容出来ないし、また例えば、「限度額を考えずに毎日デイサービスに通いたい!」など、機関の機能や制度の限界から来る制限もあるということです。

援助者は何でも言うことを聞いてあげる“親切な御用聞き”であってはいけないのです。

「あなたと出会って、自分は何に困っていて、どうしたいのかが整理できた。そしてその困りごとを解決するためにどうすれば良いのかは“私自身が決めていいんですね”」

そう思ってもらえる関係を作ることを援助者は目指すのです。

これまでの6つの基本的態度の原則を駆使して目指すものは、最終的にはこの自己決定の“促し”なのだと思っています。

「私は私でいい。」

この自己重要感とも呼ばれる“自分自身の尊厳”に自らの力で気付く事ができるよう援助するのが援助者の到達すべき目標であり、それを達成するための援助者が取るべき基本的態度が7つの原則にまとめられているのです。

個別化の原則でも明らかなように、「こうすればこうなる」という“法則”は対人援助の世界には存在しません。ここでご紹介してきた『バイスティックのケースワークの原則』は"法則"ではなく、あくまでも"原則"であるという事をよく理解しておくことも大切な事です。

社会福祉士 板垣慎司

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