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コラム

2020.10.01

正しい言葉遣いを

認知症のことを"痴呆"と呼ぶことはほとんど無くなりました。しかし今度は不思議な呼び方が現れています。
「あの人は“ニンチ”が進んだ」
「“ニンチ”の方でも受け入れられますか?」
これらはそれぞれ
「認知症の症状が強く出るようになった」
「認知症の周辺症状がある方でも受け入れられますか?」
という意味として使われます。ご本人や家族ではなく、サービスを提供する側の専門職が使うことが多いようです。

短く略したからといってそもそも数文字しか変わっていませんし、“認知が進んだ”のなら日本語としては認知能力が高まったという意味になり間違っています。
誤解を恐れずに言うと、この業界が長い人と、始めて数年の少し慣れてきた若い職員にこの言い方をする人が多いような気がします。

介護職であるなら、知った顔で「ニンチ」なんて言わずに正しい言葉を使いましょう。なぜなら、自分の親に対して「ニンチが進みましたね」と言われるよりも、「認知症の周辺症状が強く出てくるようになりました。」と言われたほうがいいに決まってる事を、私たちは良く知っているからです。最近では、専門職でこの言い方をしている人に出会うと、もうそれだけでその人の力量が見えたような気になります。

医師が病名のドイツ語表記を略したり、薬の名前を縮めて呼んだりするのとは訳が違うと思います。中には“業界風”にそう言っている人がいるのかもしれませんが、利用者がいない場所でどんな言葉を使っているかという普段の行いが、いざ利用者を目の前にした時、相手に伝わってしまうことを知っているのがわれわれ専門職です。ですから、職員同士での会話の中でもこの言い回しには敏感に反応し、改めていきたいです。

受け取る相手がどう感じるか想像してみましょう。
「認知症の周辺症状でお困りですね。」
と言うのと
「"ニンチ"が進んで大変ですね。」
と言うのとでは明らかに違うはずです。普段からそう言っていると、どこででも出てしまうようになりますので、普段から気を付けるだけでいいのです。

「それほど目くじらを立てる問題ですか?」と言われるかもしれませんが、こだわりたいです。言葉が乱れることは、その先の"虐待行為"に気付かなくなる可能性を秘めている危険な状況でもあるからです。これは、利用者さんのことを呼び捨てにしたり、あだ名や〇〇ちゃんと読んだりするのとも同じです。「お互いの信頼関係構築のためにそう呼んでいる」という反論も聞かれますが、言葉遣いと虐待の話はまた別の機会に。

社会福祉士 板垣慎司

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