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コラム

2020.06.08

ナラティブアプローチ

介護保険において訪問介護は、「要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、入浴、排せつ、食事の介護その他の生活全般にわたる援助を行うものでなければならない。」となっています。
これは、ただ単に入浴介助や排せつ介助を行うだけではありません。“生活全般にわたる援助”にどうかかわることができるかが、その方のQOLに大きく影響するものとなります。
ケアプラン及びアセスメントを受けて行う訪問介護計画の作成には、

“その方がどう生きたいか?”
“どんな想いを持って在宅で過ごされているのか?”

にも視点を置きます。
訪問看護や訪問リハビリ、通所介護といった他の在宅サービスでも、単に心身機能の維持・改善だけでなく「活動」と「参加」に焦点を当てた支援を行うこととなっていますので、そのためには、家族も巻き込みながら、その方の『目標』を共有し、多職種で連携する必要があります。

ここで重要となる視点のひとつが『ナラティブ・アプローチ』です。
“ナラティブ”とは“物語と対話”のことです。
ご利用者が生きてこられた物語、ご家族とともに築き上げてきた物語、そして今置かれている状況に至るまでの”物語”のことです。そこには「これからどうしたいか?」という”未来の物語”も含まれます。

『ナラティブ・アプローチ』とは、ご利用者が語る「病気になった理由」「経緯」「症状」「病気についてどのように考えているか」といった“物語”から、ご利用者が抱える問題や抱いている目標を全人的に(身体面だけでなく、精神や心理状態、社会的立場などを含むあらゆる要素から)把握し、支援方法を考える看護・介護のことです。ご利用者と医療・介護従事者が、対話を通じて良い関係性を作り、双方が満足の行くサービスを行うことを目的としています。
また大切なのは、その方が持つ独自の物語だけではなく、私たちとの対話を通して、問題解決に向けた新しい物語を共に創り出していくということです。つまり、私たちは、その方の新しい物語作りに参加させていただくことになるのです。

この考え方は、従来の医療が科学的根拠(エビデンス)に基づく診断・治療を重視してきた結果、良い医療を行なっても、患者さんの満足度が上がらず、医療従事者も、やりがいや達成感を感じづらかったというジレンマから起こった考え方で、最近では医療の現場でも取り入れられつつあります。
訪問の仕事には、ご本人だけでなく、その方が暮らしている環境全体を整える仕事も含まれます。日常生活上のお世話だけでなく、その方の“物語”に寄り添うケアが求められているのです。

社会福祉士 板垣慎司

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